非常用放送設備の法定点検とは。必要な資格や実施方法を解説
非常用放送設備は、オフィスビルや学校、商業施設、公共施設、病院などの施設において火災・地震災害が発生した際に、警報と避難誘導を行うための設備です。
非常用放送設備には、故障・不具合を防ぐための法定点検が義務づけられており、実施できる点検者の資格や実施方法などが定められています。
この記事では、非常用放送設備の重要性をはじめ、法定点検の内容と必要な資格、実施方法などについて解説します。
なお、非常用放送設備の耐用年数についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
目次[非表示]
- 1.非常用放送設備の重要性
- 2.非常用放送設備の法定点検とは
- 2.1.法定点検の種別
- 2.2.法定点検の実施方法
- 2.3.点検者の資格
- 2.4.法定点検を行わなかった場合の罰則
- 3.専門事業者と保守契約を結ぶことも一つの方法
- 4.まとめ
非常用放送設備の重要性
非常用放送設備は、火災や地震などの災害が起きた際に、施設内での迅速な警報と避難誘導を行うために重要な設備です。
『消防法』第17条において設置が義務づけられている“消防用設備等”のうち、『消防法施行令』第7条の1および3で規定される“警報設備”に含まれています。
▼消防法第17条
第十七条 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『消防法』
▼消防法施行令第7条の1・3
第七条 法第十七条第一項の政令で定める消防の用に供する設備は、消火設備、警報設備及び避難設備とする。
3 第一項の警報設備は、火災の発生を報知する機械器具又は設備であつて、次に掲げるものとする。
一 自動火災報知設備
一の二 ガス漏れ火災警報設備(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和四十二年法律第百四十九号)第二条第三項に規定する液化石油ガス販売事業によりその販売がされる液化石油ガスの漏れを検知するためのものを除く。以下同じ。)
二 漏電火災警報器
三 消防機関へ通報する火災報知設備
四 警鐘、携帯用拡声器、手動式サイレンその他の非常警報器具及び次に掲げる非常警報設備
イ 非常ベル
ロ 自動式サイレン
ハ 放送設備
引用元:e-Gov法令検索『消防法施行令』
上記のうち放送設備については、以下の設備・機器によって構成されています。
▼放送設備の構成
- 起動装置
- 表示灯
- スピーカー
- 増幅器
- 操作部
- 電源・配線 など
例えば、火災報知設備で火災を検知して、スピーカーから自動音声による警報を流すシステムの構成が考えられます。
災害が発生した際に警報音や避難誘導の音声を放送することによって、迅速な避難と消防機関への通報ができるようになり、被害の拡大防止や身の安全を守ることにつながります。
非常用放送設備の法定点検とは
非常用放送設備を含む消防用設備には、『消防法』第17条の3の3において定期的な点検を実施する義務が定められています。
▼消防法第17条の3の3
第十七条の三の三 第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『消防法』
法令で定められた方法・周期で点検を実施するとともに、その結果を所轄の消防署に報告する義務があります。
出典:e-Gov法令検索『消防法』
法定点検の種別
消防法で定められている法定点検には、機器点検と総合点検の2つの種別があり、それぞれ点検内容と周期が異なります。
▼法定点検の内容
種別 |
点検内容 |
周期 |
機器点検 |
外観検査による損傷・摩耗の判別や簡易的な操作による動作確認を 行う |
6ヶ月以内 |
総合点検 |
消防設備を実際に作動させて設備・機器の総合的な機能を確認する |
1年以内 |
非常用放送設備を設置してから長期間が経過すると、劣化・摩耗が進行して故障や不具合が起こることがあります。万が一の際に非常放送が動作しないリスクを防ぐために、法令に基づいた点検が必要です。
出典:国土交通省『法定点検等の実施』
法定点検の実施方法
法定点検を実施する際は、消防法施行規則で規定された報告書の様式によって記録する必要があります。非常用放送設備を含む警報設備のうち、法定点検の対象となる設備には以下が挙げられます。
▼法定点検の対象となる警報設備の例
- 自動火災報知設備
- 漏電火災警報器
- 消防機関へ通報する火災報知設備
- 非常警報器具・設備
- 非常電源(蓄電池設備)
- 配線 など
また、法定点検を実施したあとは、建物の用途に応じて規定された期間ごとに消防長または消防署長に報告することが定められています。
▼用途別の報告義務
建物の用途 |
対象となる施設の例 |
報告を行う頻度 |
特定防火対象物 |
店舗、病院、飲食店、ホテル、病院、百貨店、 地下街 など |
1年に1回 |
非特定防火対象物 |
学校、事務所、工場 など |
3年に1回 |
なお、点検基準や点検要領、点検票の様式については、総務省消防庁のホームページをご確認ください。
出典:総務省消防庁『火災予防等』/国土交通省『法定点検等の実施』
点検者の資格
法定点検は、消防設備士または消防設備点検資格者が行う必要があります。
▼資格者による法定点検が義務づけられている建物
- 延べ面積が1,000m2以上の特定防火対象物
- 延べ面積が1,000m2以上の非特定防火対象物のうち、消防長または消防署長が指定する防火対象物
- 特定一階段等防火対象物
- 全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設置されている防火対象物
特定防火対象物は、不特定多数の人や災害時に援護が必要な人が出入りする施設のことです。また、特定一階段等防火対象物は、地下あるいは3階以上に店舗や病院、ホテルなどがあり、屋内にある階段が1箇所のみの建物を指します。
上記に該当しない建物については、資格者以外でも点検を実施することが認められていますが、安全面や信頼性などの観点から消防庁によって資格者による点検が推奨されています。
出典:総務省消防庁『消防用設備等には定期点検が必要です。』/国土交通省『法定点検等の実施』
法定点検を行わなかった場合の罰則
消防法で規定される法定点検の報告を実施しない、あるいは虚偽の報告をした場合には、同法第44条第11項において30万円以下の罰金または拘留となる可能性があります。
▼消防法第44条第11項
第四十四条 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。
十一 第八条の二の二第一項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)又は第十七条の三の三の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
引用元:e-Gov法令検索『消防法』
例えば、以下のような点検は法令違反に該当するため、適正に実施できているか確認しておくことが重要です。
▼法令違反にあたる点検の実施例
- 無資格者が点検を実施していた
- 建物内で点検を実施できていない階があった
- 機器点検・総合点検の周期で実施できていなかった など
非常用放送設備の法定点検や報告を行う際は、作業員が資格を有しているか確認するとともに、あらかじめ対象となる設備・点検周期をまとめた保守運用の計画を立てておくことが重要です。
出典:e-Gov法令検索『消防法』/総務省消防庁『消防用設備等には定期点検が必要です。』
専門事業者と保守契約を結ぶことも一つの方法
非常用放送設備を含む消防用設備の点検を法令に沿って確実に実施するには、専門事業者と保守契約を結ぶことも有効です。
消防用設備の法定点検には資格が必要になるほか、設備によって点検基準や報告書の様式が異なるため、対応が複雑になりやすいと考えられます。
オフィスビルや学校、病院、商業施設などの消防設備について保守・メンテナンスを行っている専門事業者と保守契約を結ぶことで、法令の遵守につながります。
また、保守契約を締結すると次のようなメリットもあります。
▼保守契約を締結するメリット
- 法定点検には含まれない定期点検や精密点検を実施できる
- 性能や劣化状況に応じて設備の入れ替えをサポートしてもらえる
- 故障や不具合が発生した際に復旧対応を依頼できる など
保守契約を締結するメリットについてはこちらの記事で解説しています。
まとめ
この記事では、非常用放送設備の法定点検について以下の内容を解説しました。
- 非常用放送設備の重要性
- 消防法に基づく法定点検の内容
- 専門の事業者と保守契約を結ぶメリット
非常用放送設備は、6ヶ月以内または1年以内に1回の頻度で法定点検を実施するとともに、建物の用途に応じて規定された期間で点検結果の報告を行うことが義務づけられています。
また、法定点検の実施には資格が必要になるほか、消防用設備の種類によって点検基準や点検要領、報告書の様式が異なります。
法令を遵守して安全・安心な施設環境を維持するには、専門事業者と保守契約を締結して継続的に保守・メンテナンスを依頼することも一つの方法です。
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